--------- JUNE.9.2020 / Blog ----------

人類の幸福のために

今日は、とっても静かな時を過ごしました。

実は、寝坊をしてしまい、予定が狂っただけですが、
せっかくのこの時間を、気持ちよく過ごそうと思いました。

お昼はお天気が良かったので、

イヤフォンをつけ、ピアノの静かな演奏を聴きながら、
風で木々やドリームキャッチャーが静かに揺れていて。
鳥が飛んでいて。
雲が流れていて。
ルイが気持ち良さそうに寝ていて。
ジャクソンが大きなバッタをくわえて帰ってきて、どん引きをして。

とってもニュートラル。和やかで。穏やかで。静かで。

ピアノの音と、自分の吐息の音だけ。

こんな時間を過ごせる事を幸せに思います。
感謝ですね。

皆さんは、今、どんな音を聴いていますか。

昨夜、ミゲル・デ・セルバンテスの小説 ”ドン・キホーテ” をKindle で探してる最中、久しぶりに目に入ってきた方の名前がありました。

ホセ・ムヒカ 氏 (José Alberto Mujica Cordano)

ウルグアイの政治家で、第40代ウルグアイ大統領です。

日本では、「世界で最も貧しい大統領」と呼ばれて親しまれていますね。
個人的には、世界で最も豊かな心を持つ大統領と呼んでいます。

個人資産の87%を寄付して、家とトラクターと農園だけの暮らしをしていたそうです。

なぜ、ドン・キホーテに引っかかってきたかと言いますと、
この本は、ホセ氏の愛読書だそうです。

ドン・キホーテ。

 ある貧しい男が、騎士道物語に没頭するあまり、自分を遍歴の騎士だと思い込み、
いい歳してドン・キホーテと名乗り、世界の秩序を正したいと、仲間と冒険の旅に出発します。
不器用で、何度も失敗ばかりして旅を中断しますが、夢を追い続け、何度も旅に出発する騎士道物語。

普通に読むと、何をやってるの、あなた。と思える本。
単なる冒険物語と読むか、人間の心の深くて不思議な部分を表現する本として読むかは、その人次第。

この本の話は、またBook Geek で紹介します。

そう、今日は、ホセ氏のスピーチを、紹介したかったのです! これがメイン。

数々の素晴らしい言葉、思想を遺して下さっている方ですが、
心にずっしりきたスピーチが、
2012年6月にブラジルで開催された「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」でのもの。

リオ+20 は、次の世代が住みやすい世界を残すために,
世界中から各国の代表や民間の人々が集まり,
環境や貧困,災害など多くのテーマについて話し合う場です。

ちなみに、日本からは、玄葉外務大臣が、
東日本大震災を経験した日本の「持続可能な社会とは何か」という問題に関して述べ,
「環境未来都市の世界への普及」「世界のグリーン経済移行への貢献」「強靱な社会づくり」を3本柱とする
「緑の未来」イニシアティブを発表しました。
(外務省 リオ+20 日本の役割 より)

その中、会議の最後の演説が、ウルグアイ。
演説者は、ウルグアイ大統領 ホセ・ムヒカ 氏でした。

自分で日本語に訳すより、とても忠実に翻訳して下さっている、
打村 明 さん (Twitter @akirau / 記事 @Hana.bi) より、ホセ氏のスピーチ翻訳をお借りさせて頂きました。

一つひとつの言葉から、彼がとても愛情深く、世界を曇りない眼で見ている事が、とても分かります。

流し読みをせず、最後まで読んで頂きたいです。
彼が伝えたい事を理解し、何度も読んで頂きたいです。そして考えて下さい。
まず、美味しいコーヒーか紅茶を用意しましょう。

ムヒカ大統領のリオ会議スピーチ: (訳: 打村明)

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会場にお越しの政府や代表のみなさま、ありがとうございます。

ここに招待いただいたブラジルとディルマ・ルセフ大統領に感謝いたします。

私の前に、ここに立って演説した快きプレゼンテーターのみなさまにも感謝いたします。

国を代表する者同士、人類が必要であろう国同士の決議を議決しなければならない素直な志をここで表現しているのだと思います。

 

しかし、頭の中にある厳しい疑問を声に出させてください。

午後からずっと話されていたことは持続可能な発展と世界の貧困をなくすことでした。

私たちの本音は何なのでしょうか?

現在の裕福な国々の発展と消費モデルを真似することでしょうか?

 

質問をさせてください:ドイツ人が一世帯で持つ車と同じ数の車をインド人が持てばこの惑星はどうなるのでしょうか。

息するための酸素がどれくらい残るのでしょうか。

同じ質問を別の言い方ですると、

西洋の富裕社会が持つ同じ傲慢な消費を世界の70億〜80億人の人ができるほどの原料がこの地球にあるのでしょうか?

可能ですか?

それとも別の議論をしなければならないのでしょうか?

 

なぜ私たちはこのような社会を作ってしまったのですか?

 

マーケットエコノミーの子供、資本主義の子供たち、即ち私たちが間違いなくこの無限の消費と発展を求める社会を作って来たのです。

マーケット経済がマーケット社会を造り、このグローバリゼーションが世界のあちこちまで原料を探し求める社会にしたのではないでしょうか。

 

 私たちがグローバリゼーションをコントロールしていますか?

あるいはグローバリゼーションが私たちをコントロールしているのではないでしょうか?

 

このような残酷な競争で成り立つ消費主義社会で「みんなの世界を良くしていこう」というような共存共栄な議論はできるのでしょうか?

どこまでが仲間でどこからがライバルなのですか?

 

このようなことを言うのはこのイベントの重要性を批判するためのものではありません。

その逆です。我々の前に立つ巨大な危機問題は環境危機ではありません、政治的な危機問題なのです。

 

現代に至っては、人類が作ったこの大きな勢力をコントロールしきれていません。

逆に、人類がこの消費社会にコントロールされているのです。

私たちは発展するために生まれてきているわけではありません。

幸せになるためにこの地球にやってきたのです。

人生は短いし、すぐ目の前を過ぎてしまいます。命よりも高価なものは存在しません。

 

ハイパー消費が世界を壊しているのにも関わらず、高価な商品やライフスタイルのために人生を放り出しているのです。

消費が社会のモーターの世界では私たちは消費をひたすら早く多くしなくてはなりません。

消費が止まれば経済が麻痺し、経済が麻痺すれば不況のお化けがみんなの前に現れるのです。

 

このハイパー消費を続けるためには商品の寿命を縮め、できるだけ多く売らなければなりません。

ということは、10万時間持つ電球を作れるのに、1000時間しか持たない電球しか売ってはいけない社会にいるのです!

そんな長く持つ電球はマーケットに良くないので作ってはいけないのです。

人がもっと働くため、もっと売るために「使い捨ての社会」を続けなければならないのです。

悪循環の中にいるのにお気づきでしょうか。

これはまぎれも無く政治問題ですし、この問題を別の解決の道に私たち首脳は世界を導かなければなりません。

 

石器時代に戻れとは言っていません。

マーケットをまたコントロールしなければならないと言っているのです。

私の謙虚な考え方では、これは政治問題です。

 

昔の賢明な方々、エピクロス、セネカやアイマラ民族までこんなことを言っています。

「貧乏なひととは、少ししかものを持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ」

これはこの議論にとって文化的なキーポイントだと思います。

 

国の代表者としてリオ会議の決議や会合にそういう気持ちで参加しています。

私のスピーチの中には耳が痛くなるような言葉がけっこうあると思いますが、

みなさんには水源危機と環境危機が問題源でないことを分かってほしいのです。

 

根本的な問題は私たちが実行した社会モデルなのです。

そして、改めて見直さなければならないのは私たちの生活スタイルだということ。

 

私は環境資源に恵まれている小さな国の代表です。

私の国には300万人ほどの国民しかいません。

でも、世界でもっとも美味しい1300万頭の牛が私の国にはあります。

羊も800万から1000万頭ほどいます。

私の国は食べ物の輸出国です。

こんな小さい国なのに領土の90%が資源豊富なのです。

 

私の同志である労働者たちは、8時間労働を成立させるために戦いました。

そして今では、6時間労働を獲得した人もいます。

しかしながら、6時間労働になった人たちは別の仕事もしており、結局は以前よりも長時間働いています。

なぜか?

バイク、車、などのリポ払いやローンを支払わないといけないのです。

毎月2倍働き、ローンを払って行ったら、いつの間にか私のような老人になっているのです。

私と同じく、幸福な人生が目の前を一瞬で過ぎてしまいます。

 

そして自分にこんな質問を投げかけます:これが人類の運命なのか?

私の言っていることはとてもシンプルなものですよ

発展は幸福を阻害するものであってはいけないのです。

発展は人類に幸福をもたらすものでなくてはなりません。

愛情や人間関係、子どもを育てること、友達を持つこと、そして必要最低限のものを持つこと。これらをもたらすべきなのです。

 

幸福が私たちのもっとも大切なものだからです。

環境のために戦うのであれば、

人類の幸福こそが、環境の一番大切な要素であるということを覚えておかなくてはなりません。

 

ありがとうございました。

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如何でしたでしょうか。

何を思いますか、何を考えますか。

そして、打村さんは、このホセ氏のスピーチに併せ、
もうひとつ、物語を紹介しています。
南米エクアドルに伝わる物語。

皆さんにとっても、
ホセ氏のスピーチについて考え、自分に問うと思います。
自分に何が出来るのか、と。

皆さんと同じように、私もサミットでのスピーチを聴き、
焦りに似た感情と、もっと何かをしなければ。何が出来るのか。

と自分の無力さを感じた事を覚えています。

 

この物語は、そんな心の重みを救い上げてくれるように思います。

 

ハチドリのひとしずく

 

森が燃えていました

森の生き物たちは われさきにと 逃げて いきました

でもクリキンディという名のハチドリだけは 行ったり来たり

口ばしで水のしずくを一滴ずつ運んでは 火の上に落としていきます

動物たちはそれを見て

「そんなことをして いったい何になるんだ」と笑います

クリキンディはこう答えました

「私は、私にできることをしているだけ」

 

物語は、ここで終わります。
ここで終わらせた意味があると感じます。

この物語の続き、終わりは、自分たち次第。

自分たち一人一人が創り、完成させなければなりません。

 

森はどうなったのでしょう。
クリキンディはどうなったのでしょう。
動物達は、笑ったままだったのでしょうか。

 

みなさんは、どんな先を描きますか。

 

スピーチを理解し、その先を考えた時、
自分に出来る事は、と考えた時、

答えを導き出すのは、自分しかいない。と気づきます。

 

一滴一滴ずつであろうが、意味をなさないと笑われようが、

自分が決めた事、自分が出来ると信じた事を、自分は笑わない。

自分は、自分にできることをするだけです。

 

にしても、ホセ大統領、かっこいいですよね!

この方のように年を重ねたいです。

 

自分が出来る事をやり通し、

未来を生きる子供たちが

私たちが創ったこの世界に失望をしないように、一個人として出来る事をする大人でありたい。

政府のせい、社会のせいだと、誰かに責任を押し付けるだけの大人にはなりたくない。

言葉で終わらず、行動をする大人でありたい。

 

この世界を豊かにするには、大人たち一人ひとりが、この地球にかかわっている事への意識をしっかり持ち、

そして、それぞれが自分に出来る事から行動をすることだと思います。

 

最近、世界では、10代の子供たちがムーブメントを作っています。

それに参加する大人達。

子供たちが、先人が破壊してきたこの世界の為に、立ち上がらなければならない現代。

情けないと感じます。

 

子供たちの幸福の為に、大人たちが立ち上がるべきだと、強く思います。

子供達を自分達の前に立たせるのではなく、大人が子供の前に立ち、彼らを守らなければ。

そして、背中を見させなければならないと感じます。

私たちは、子供達のお見本、希望、インスピレーションでなければなりません。

 

と、改めて、胸に熱く沸き上がるものを感じていました。

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